文豪の愛した羽二重団子(日暮里)
数々の文学作品にも芋坂の團子(吾輩は猫である・松の葉:泉鏡花)・藤木茶屋と呼ばれて…(坂の上の雲:司馬遼太郎)・・・文学作品に芋坂の團子とあれば、この店の事で間違いない。くらいの人気・有名団子屋である。
しかも、病床で家から出ない正岡子規はこの近くに住んでおり(子規庵)、間食に
「あん付き三本焼一本を食う」と日記に書いている。元気な食べっぷりだ!
いや、元気ではないはず・・・それだけ美味いのだろう!
食べずにはいられない。
『子規セット』なるものもある。
もちろん、あんこ3本・焼き1本だ。(笑)
↓晩御飯前だったので、一本ずつ。たしかにきめ細かいあんがさっぱりしている。
けど、以外にも焼きが美味しくて、餡の方より好みに感じた。多分歩き疲れて、
甘みより塩を求めてたのかも知れない。しかし、文豪は甘党だね〜。
↓羽二重団子のHPより抜粋
文学作品と当店
夏目 漱石著
正岡 子規著
「道潅山」より
・初出 新聞「日本」 明治32年10月2日
・正岡子規全集第13巻 講談社刊 昭和51年
こゝに石橋ありて芋坂團子の店あり。繁昌いつに變わらず。店の内には十人ばかり腰掛けて喰ひ居り。店の外には女二人彳みて團子の出來るを待つ。根岸に琴の鳴らぬ日はありとも此店に人の待たぬ時はあらじ。戯れに俚歌を作る。
根岸名物芋坂團子賣りきれ申候の笹の雪
「仰臥漫録」より
・全集の他 岩波文庫緑13-5所載
九月四日 朝曇 後晴
昨夜はよく眠る
新聞『日本』『二六』『京華』『大阪毎日』を読む例の如し 『海南新聞』
は前日の分翌日の夕刻に届くを例とす
朝:
雑炊三椀 佃煮 梅干
牛乳一合(ココア入り) 菓子パン二個
昼:
鰹のさしみ 粥三椀 みそ汁 佃煮 梨二つ
葡萄酒一杯(これは食事の例なり 前日日記にぬかす)
間食:
芋坂團子を買来らしむ(これに付悶着あり)
あん付三本焼一本を食ふ 麦湯一杯
「寒山落木巻三」「俳句稿巻一」より
・全集の他 岩波文庫緑65「子規句集」所載
岩波文庫緑13-3「子規歌集」所載
芋阪に名物の團子あり
芋阪も團子も月のゆかりかな
根岸名所ノ内
芋阪の團子屋寝たりけふの月
元光院観月会
芋阪の團子の起り尋ねけり
名物や月の根岸の串團子
秋昔三十年の團子店
短歌会第四会
芋阪の團子売る店にぎわひて團子くふ人團子もむ人
泉 鏡花著
田山 花袋著
「東京の近郊」より
・実業の日本社刊 大正5年
昔からきこえた團子屋である。其處ももうあるかないかわからない新しい流行の力に蹴落されて、もうとうになくなって了ってるかと思って行って見ると、不思議にもそれが依然として残っていた、私は入って行った。
-中略-
私は醤油團子を食ひながら、昔のことなどを思った。上野の図書館から天王寺の墓越しに午飯代わりに此處によく團子を食ひに来たことなどを思い出していた。根岸に友達がゐて其處に行くと、よくこの團子を出してくれたことなどをも思ひ出した。團子は依然として旨かった。
久保田 万太郎著
船橋 聖一著
「墨田川物狂ひ」より
・新潮社刊 昭和26年
また、お稻さんが、わたしびいきであった。そっと、芋坂のお團子や、甘納豆、菊見せんべいなぞ、を持ってきては、わたしに食べろと言った。そして、>
「こゝで。お上がりなさい。奥へ見つかると、大變だから」>
と言って、わたしの食べ終わるのを、見届ける様にした。